夜明け前が最も暗い

何かを失った自分が、新しい自分を手に入れるまで。

夏の怪談『死中』~後半~

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続き

 

 

サークルの活動が忙しくなり、自然とKのアパートに寄ることが多くなりました。

Kは自分達が来るといつもあのシチューを作ってくれました。

食卓に出てくる白いクリームシチュー。

次の日も。そして、また次の日も。Kは同じシチューを作り続けました。

話を聞くとどうやら本人だけでもシチューを作って食べているのだとか。

 

いつしか、自分達はあまりの頻度に何かと理由をつけて断るようになりました。

 

それから数日が経ち、撮影は終了し、Kのアパートに行くことも無くなりました。

 

 

皆さん、もうおわかりですね。しかし、本当の恐怖はここからです。

 

 

あれから数年が経ち、現在。

あの時は彼がなぜシチューを作り続けていたのかわかりませんでした。

 

しかし、無職(多忙)になった今、

彼がシチューを作り続ける以上に、自分は毎日のように野菜炒めを作っています!

こうして、今では自分が彼以上の存在へとなってしまいました。

 

自分が野菜炒めを作り続ける理由、それはなぜか。

 

楽だから!!

献立が一つしかなく、材料もルーティーンであればなお良し。

考える必要もなく、ただ栄養補給のためだけに作る。それだけ。

 

今ならばわかりますが、あれは工学部の講義やサークル活動で忙しかった

彼が見つけた一種の時短術だったのかもしれません。

たまたま見つけたのが好きなクリームシチューだっただけで。

 

半ば冗談のような、半ば怪談のような本当の話。皆さんもどうぞご用心を。

 

ちなみに、Kとは卒業から会っていませんが、

出身地の会社でいきいきと働いているようです。

 

需要があるならば、今度こそ本当の恐怖体験を。

 

 

ぺんぎん